収益基準方式、DCF方式とは
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収益基準方式(DCF方式)は、買収ターゲットの価値は、現在の買収ターゲットが有する事業の収益力が有効な期間内におけるキャッシュ・フロー(現金収入)によって決定するというものです。
最も理論的な買収価格算定方式といえます。そして、将来にわたる現金収入は事業リスクを考慮したうえで、一定の率で割引き、現在価値に換算します。
- 収益基準方式(DCF方式)の作業手順
- 1.ターゲットの将来の成長性、収益性や設備投資などの事業計画を吟味し、幾つかの仮定を設ける。
- 2.事業計画に基づき、ターゲットの一定期間の予想損益計算書と貸借対照表を作成する。
- 3.キャッシュ・フロー表を作成し、各年度のキャッシュ・フロー予想額を算定する。
- 4.予想期間の最終年度における買収ターゲットの残存価値を見積もる。
- 5.買収ターゲットの事業リスクを考慮したうえで割引率を設定する。
- 6.3,4の合計金額を5で割り引き、企業価値を算定する。
- 7.6で求めた金額から、現在の買収ターゲットの負債(長期及び短期)を控除することで、買収ターゲットの出資金の価値を算定する。
- キャッシュ・フローの計算
- キャッシュ・フローの中でも、DCF分析で用いられるのは、フリー・キャッシュ・フローという概念です。フリー・キャッシュ・フローとは、買収ターゲットの事業が作り出す株主への分配可能資金と定義できます。
理論的には、分配可能資金とは、現在の収益性や成長力を妨げることなく、買収ターゲットから引き出すことのできる金額です。過去の借入金の多寡により買収ターゲットの事業の価値が左右されないように、キャッシュ・フロー表の作成にあたっては、買収ターゲットには借入金がまったくない、すなわちデット・フリーの状態と仮定すべきです。
算定過程からいえば、キャッシュ・フローとは、事業から生じる現金収入から現金支出を差し引いた残額と定義されます。借入金がまったくないと仮定しますから、キャッシュ・フローの算定には、支払利息、借入金の元本返済や新たな借入金による現金収入などの財務収支は除かれます。
DCF方式では、3年から5年の期間のキャッシュ・フローの予測をする。理論的には、市場が成熟することによって買収ターゲットの事業で作り出されるキャッシュ・フローが一定になるまで予測を立てるべきです。 - 残存価値の予測
- 残存価値とは、キャッシュ・フロー予測期間の最後の時点において、買収ターゲットが依然として有する一定の価値をいいます。
この残存価値を一定率で割り引いたものに、キャッシュ・フローの現在価値を加えることにより、企業価値が最終的に算定されます。
残存価値の算定方法は、PA(perpetuity assumption)法が一般的で、キャッシュ・フロー予測期間の最終年度におけるキャッシュ・フローが永久に継続すると仮定します。具体的には、最終年度のキャッシュ・フローを割引率で割って算定することになります。
また、DCF方式では通常、資本コストと借入コストの双方を考慮した率であるWACC(weighted average cost of capital)を用いるのが一般的です。 - 収益基準方式(DCF方式)の長所・短所
- 収益基準方式(DCF方式)の長所
- ・買収ターゲットが買収後にもたらすと思われるメリットを具体的な金額によって表すことができる。
- ・市場の状態による影響を大きく受けることなく、買い手にとっての真に公正な価格を算定することができる。
- ・DCF方式を通じて買い手は、買収ターゲットの事業を、そのシナジー効果と合わせてもう一度冷静に分析する機会が与えられ、買収意思決定の妥当性を慎重に検討することができる。
- ・借入金の利払いや元本ん返済に充当されるべき余剰資金を算定することができる。
- ・買い手と売り手の買収価格交渉においては、DCF方式を通じて、お互いの事業の将来見通しに関する見解の相違を明らかにして交渉の焦点を明確にすることができる。
- 収益基準方式(DCF方式)の短所
- ・将来の損益見通しを正確に予想し、作成することは不可能に近い。
- ・割引率、事業計算期間後の成長率、設備投資計画など前提条件により算定結果が大幅に異なる。
- ・技術的には他の方法と比較して、より複雑で手間がかかるため、例えばすばやく概算で買収価格の推定が必要となるような場合には不向き。
- ・残存価値はしばしば買収価格のうち、70%以上を占めることがあるが、3年後、5年後の買収ターゲットの価値を正確に予想することは不可能。
- ・戦略的買い手は、買収案件を正当化するために、シナジー効果をキャッシュ・フロー算定過程に盛り込むケースが見られるが、これによって計算される価格は、いわば買い手の価値であり、市場価格よりも相当高額になる恐れがある。
